親愛なるOKCへ
To read in English (Published May 18, 2023), please click here.
僕のNBAのキャリアがもう2年も経ったことを考えると、なんだかすごいね。2年目のことはずっと特別なものとして、これからも僕のなかで生き続ける。その理由はふたつの関係にある。チームメイトとのつながり、それからファンとオクラホマ・シティとの間柄だ。“Loud City”と呼ばれるこの街と人々は、半端じゃない。だから3年目のへの準備が始まろうとしている今、僕はあなたたちのすべてのサポートに感謝を表すために、この手記を書きたい。
まずはザイの短い話から始めるべきだろう。彼がチームに加入した頃、出場機会はまったくなかった。なにもザイを貶めようとしているわけじゃなく、ただそれがバスケットボールというものなんだ。短い時間だけ途中出場するところから始まり、ローテーションに入っていく道を自ら築き上げていかなければならない。そんな頃、ダラスでのあの試合があった。今でも覚えているよ。僕は足首を痛めていたからベンチに座って試合を観ていたけど、勝負はほとんど終わっていた。うちが完敗しそうだったんだ。すると、コーチたちはアイザイアを投入。残り4分くらいで、16点差くらい離されていた状況だったのにアイザイアは完全に手がつけられなくてね。結局、試合は延長に投入し、僕らが勝利を収め、彼は15得点を挙げた。それを境に、ザイはレギュラーの座を獲得したんだ。
ジェイリン・ウィリアムスも同じだ。彼も最初は出番がなく、Gリーグから這い上がって、うちのセンターポジションを任されるようになった。二人ともすごいよ。今シーズンに僕らが成功できたのは、多分に彼らのおかげだからね。自分の番号が呼ばれた時に──何分プレーできるかはわからないけど──気概と忍耐が必要だ。それが当たり前だなんて思わないよ。新しく加入した彼らは、その仕事ぶりによって、チーム全体の雰囲気を変えた。当然、僕らがフロアでやっていることを仕切るのはコーチで、彼は僕がこれまでに見てきたコーチにはない頭脳を持っている。僕らのリーダーであるシェイは、グループがあるべき姿を保つために高いスタンダードを定めてくれるんだ。シェイのことなら一日中、話していられるよ。そしてルーも。でも普段はあまり出場機会を得られないのに、大事な場面で仕事をしてくれる仲間には心から敬意を表さないとね。なぜなら彼らこそ、チームの屋台骨なんだから。彼らは練習に来て、誰よりもハードにトレーニングを積んでいる。
3年目のへの準備が始まろうとしている今、僕はあなたたちのすべてのサポートに感謝を表すために、この手記を書きたい。
- ジョシュ・ギディー
それはここのカルチャーになっている。これから築いていくものではなく……すでにあるものだ。
不思議なもので、地球の裏側に住み、遠く離れた場所からNBAを追っていたら、知らないことがたくさんあるファンになってしまうんだ。2年前にサンダーからドラフトで指名された時、僕はNBAの基本的なことしか知らなかった。KD、ラス、ハーデンくらいしか。ウェスタン・カンファレンス決勝でゴールデンステイトに敗れ、KDはチームを離れた。2019年のプレーオフでは、デイムのシュートによってサンダーが敗れるところを観た。そんなふうに、過去に起きたいくつかの場面くらいは知っていたんだ。でも実際にここに来てみると、自分がいかに無知だったかを思い知らされた。例えば、自分がその一部を担うことになるコミュニティについて、以前は知る由もなかった。オクラホマ・シティにとって、サンダーがどれほどの意味を持つのか。それはこの街のハートビートなんだ。行く先々で、ファンが愛情を示してくれる。それは僕のように新しい国で新しい生活を始めようとしていた者にとって、実に大きな意味を持つ。勝っても負けても、彼らがいてくれる。故郷のメルボルンで誰かに「オクラホマってどんな街? ファンはどう?」と訊かれたら、僕はいつもこう答えている。「そこにある愛情は本物だ。ひしひしと感じるんだ」と。
僕の1年目から、大音量を生み出す大勢の観客がいた。全員で爆発しているみたいだったね。ペイコムの雰囲気は、盛り上がると、とんでもないものになる。そして今年はこれまより多くの勝利を掴み始めていたから、クレイジーなことが起きたんだ。ハハハ。そんなことは不可能に思えたけど、ファンは応援を次のレベルに上げたんだ。どんな夜になろうと、“Loud City”と呼ばれることになる。だからこそ、僕らはそこに行きたくなるし、気持ちを込めてプレーするんだ。
ここに来た時、チームが再建の時期にあることがわかった。複数のオールスター級の選手が抜け、ルーキーや若手がすべての試合に先発するようになっていた。サムはおそらく、彼が携わるビジネスにおいて、最高の手腕を発揮するひとだ。これまでにトレードしてきた選手や、ドラフトで獲得したすべての選手を見れば、そう言えるね。でも僕が思うに、彼の最大の特長は決して事を急がないところにある。パニックに陥ったり、チームが辿ってきた道筋から逸れたりすることがないんだ。サムは僕をドラフトの6番目で獲得。補欠として迎えたと思われていて、誰も僕がここまで活躍すると予想していなかった。ジャレンは12番目に指名されたけど、1巡目の後の方に呼ばれると予想されていた。このようにサムは、このチームの再建に大きく貢献したんだ。それからマーク・デイグノートも称えたい。彼はこのグループと共に素晴らしい仕事をしているよ。
僕たちはなかなかの選手だよ。僕の言っている意味はわかるよね? このチームには僕らがいるんだ。
- ジョシュ・ギディー
昨シーズン、勝利に見放されていたときは辛かったな。なにも選手たちが真剣じゃなかったってわけではない──真剣勝負に挑んでいたよ。経験不足を痛感する時期や、ただ単に相手の方が実力で上回っていた時もあった。それでも今シーズンも、僕らは同じ道のりを歩んできた。そのプロセスにあるステップを踏み飛ばすことはない。なぜならそれは、僕らのような若く生まれ変わろうとしているチームにとって、すごく重要だからだ。夏のバケーションから戻ってきてすぐ、スタートラインに立つ準備ができていた。サムはドラフトで良い選手を獲得し、チームは準備ができていた。トレーニングキャンプとプレシーズンでは、僕らがシーズンに上位を狙えることが次第に明らかになっていったよ。グループが成長するには数年を要すこともあり、実際にそうだった。でも僕らは毎日、すべてのトレーニングで成長と改良を続けていった。そして今、僕らは成功を目にしようとしている。これがプロセスだ。敗北を好む人はいないけど、そのフェーズを乗り越えるために、遠くから物事を眺められるようにして、より大きな全体像を掴まなければいけないんだ。
良い日々を積み重ねていけば、勝利に近づいていく。僕らはそれがわかるようになった。
ロッカールームの外にいる人々は、僕らのシーズンの行方について、おそらくそれぞれに独自の意見を持っていたと思う。ほとんどのひとは、僕らが6月のドラフトの抽選でトップに来ると思っていたはずだ。仕方ないよね。僕らは若いチームで、ドラフトで全体2位指名を受けた選手が怪我をしてシーズンを棒に振った。理解できるけど、僕らは気にしていない。外部のノイズがこのチームに余計なモチベーションを与えることなどない。僕たちは人々の想像よりも優れたクオリティーを備えていると、チームのなかで理解していたんだ。最初の2試合は勝てなかったけど、シーズンを通して勢いが出てくると、どんな相手も打ち負かしていった。本当に強いチームにも勝っていくと、人々はOKCが弱小ではないことに気づいていったと思う。なめてかかったら、痛い目に遭うことになるから、シェイやルー、ジャレン、そしてもちろん僕に、対策を講じなければならない。僕たちはなかなかの選手だよ。僕の言っている意味はわかるよね? このチームには僕らがいるんだ。
正しい方向へ進んでいるということだ。チームの誰もがそう感じているよ。
- ジョシュ・ギディー
ロッカールームで強調したのは、試合に負けたからといって動揺しないことだった。時には4連敗、5連敗することもあるし、若いチームなら、それが10連敗や11連敗になることもある。軌道を修正するための経験が足りないからね。オールスターのブレイクの後、チームの全選手が準備できているわけではないとわかった。集中力を欠き、結局、5連敗してしまった。ただしこのチームの好きなところは、それほど負けが込んでいても、次の日の練習に下を向いて現れる選手がいないことだ。誰もが次の試合に目を向けている──過去の試合はもう終わっているので、僕らは前を向いて行かなければならない。調子を取り戻し、次の10試合で8勝を収めたことが重要なんだ。それこそ、グループの成長と成熟を示しているものだから。
とはいえ、もし僕に振り返らざるをえない試合がひとつもなく、日程表のなかに勝つべき試合がなかったといえば、それは嘘になる。たとえばデトロイトでの試合のことはよく覚えている。うちがハーフタイムまでにリードしていて、いい感じで試合は進んでいたというのに、復調した相手に易々と逆転され、僕たちは負けてしまった。インディアナでも同じことが起こった。キープレーヤーをふたり欠いていた相手に敗れたんだ。主力選手がひとりもいなかったシャーロットにも、ホームで敗北。正直に言うと、これらの試合には、楽勝できると思って臨んでしまったところがある。そのツケを払わされてしまったわけだ。なぜならウェスタン・カンファレンスは、ものすごく接戦になったからね。もしそれらの試合に勝てていれば、シード権も10から7や8、あるいは6まで上がっていただろう。
結局のところ、それが若いチームと経験豊富なチームの違いなんだ。それでもポジティブなことがあったとすれば、僕たちは若いチームに然るべき学びを得て、正しい方向へ進んでいるということだ。チームの誰もがそう感じているよ。まだまだ理想の姿にはほど遠いけど、ここ1、2年の間にみんなで取り組んできたことが、光と成功を感じさせてくれている。それはいいことだし、テレビで僕たちの試合が放送されるようになる前からのことだけどね。
ポストシーズンにニューオーリンズからあんなに良い白星を奪ったけど、ギャンブル性は高かった。僕らは敵地に乗り込んだ若いチームだ。誰もうちが勝つなんて思っていなかったけど、敵の本拠地で勝利を収めることができた。僕にって、それはポストシーズンの初勝利だったから特別だよ。子供の頃、あのような大事な試合を観て育った。夢に見ていたような試合だったわけだ。その2日後、ミネソタのホームでプレーしたが、残念ながら、そこを突破するまでの力がついていなかった。準備ができていなかった僕たちを向こうに回し、相手は序盤から攻め立てた。相手チームは以前に、同じような状況を経験していた。だから彼らは、そんな試合で勝利を収める術を心得ていたんだ。
そこまでの道のりとニューオーリンズでの素晴らしい勝利の後に、そんな負け方をしてしまって、僕らは後味の悪さを感じていた。とはいえ、後学のための良い経験になったとも思っている。ニューオーリンズ戦は、普段通りにプレーできた。しかしミネソタでは、1年を通して一度も試していなかったことをやろうとしてしまったと感じている。それまでに自分たちがやってきたことを続けなかったんだ。本当はそこから勝機を見出すべきだったのに。いずれにせよ、このチームについて言えるのは、ここからさらに成長していくってことさ。
僕はこのグループが大好きだ。そして心の底から、この街を愛している。僕らは自分たちがなるべき姿にさえ、まだなれていないんだ。でもそれは僕たちにとって、最高のポジションだと考えているよ。
さらなる成功が待っている。
10月に会おう。
ジョシュ